「京丹後のモデルハウス」

延床:105㎡ 木造2階建て

施工:住まいのトミタ

床:オーク無垢1枚もの、カラ松、大谷石、

コルクタイル、サイザルカーペット、畳 

壁:砂漆喰、フェザーフィール、クロス、タイル 

天井:米栂小幅板(1本溝・2本溝)、クロス

京丹後の空気感

遠方で仕事をする時に心がけていることがありますが、その土地の風景をできるだけ見るようにしています。
敷地の周りはもちろんのこと、近くに海があれば見に行くし、山の感じはどうだろう、光と影の感じ、風の抜け方、また湿度の感じ、そしてその土地に建っている民家や新しい建物も観察してその土地の空気感をみつけるようにしています。
設計はイメージを共有するだけでもできるのかもしれませんが、自分はやはり土地の空気感を持った、その土地に建ってるんだよという家をつくりそこでの暮らしに結びついて欲しいなと思ってるので、ものをみること、感じることを大切にしています。

この建物、「住まいのトミタ」のモデルハウスとしてしばらく使われて後々販売される予定になっています。
トミタのみなさんってほんとに人がよいですが、家を建てるだけではなくてきちんとその後もお客さんと付き合ってるのがよくよく分かる、その土地の、京丹後という場所で仕事をしている工務店としてのよき姿が感じられます。

普段はお客さんの人となりを見ながら雰囲気を決めていきますが、今回はトミタのみなさんの雰囲気、また土地の雰囲気を考えて家をつくっています。
雪も降り寒い地域ですが、例えば屋根断熱はセルロースファイバー厚み300+フェノバボードJ厚み45を付加しており、室内の環境が快適になるよう断熱はしっかりとしています。(薪ストーブもあるので冬はTシャツ1枚でいけるでしょう・・・)

また建物が建ってる場所はショッピングセンターマインというこの地域の中心部の大きなショッピングセンターのすぐ横ですが、下屋、庇、建物のL型配置、中庭の取り方、塀の作り方を工夫することでその大きな建物が見えないようにしつつ、中庭には大きな木を植えてその木陰によって実に穏やかな時間が流れる空間になっています。
建物を外から見ると小さく感じますが、登り梁で吹き抜けとしているので室内に入るとものすごく広く感じます。玄関入ってすぐの廊下は天井高さ2160~2320の勾配天井ですが、その低さが効いてますし低いところがあるところでこのLDKに出た時に開放的な感覚になるよう設計しています。(天井の小幅板の溝幅を変えるなどいろいろな技術も使ってますが、高さはかなりスタディしたのでうまくいってますねえ)

そして、モデルハウスということもあり本物の素材をいかに使ってそれを体感してもらうかも考えています。
壁は砂漆喰、フェザーフィールという漆喰のコテ塗、土佐和紙。
床は高正さんのオーク無垢1枚もので長さが1800あります。このオークの床がとんでもなく美しいですが・・・張り方もアアルト張りで工夫して張ってもらいました。2階はカラ松で固さの違う床の雰囲気を感じられるようにして、階段はサイザルカーペットとすることでいろいろな足触りを楽しめるようになっています。
天井は米栂小幅板でこちらも特注で製作いただけるので玄関から廊下は1本溝、LDKは2本溝とすることで狭いところから広いところに出たときに溝の線が増えて感じるようにし、その工夫によってさりげなくLDKの空間が拡がってみえるように配慮しています。

また、リビングの腰壁は堀部さんが玉川田園調布集合住宅で使われてた織部製陶のタイルを使用していますが、腰壁にだけ貼ることで天井が高くても重心が低くなるようになっています。
居心地のよい住宅は重心が低くて落ち着く家かなと思ってますが、窓の取り方、窓の上に壁がどれだけ見えるか、素材の重さを使って下の方に重い感覚があれば下に重心がくるので上の方は軽く見えて高さは気にならなくなるなど、それぞれの配置には意味があって心地よい空間になるよう考えています。

建具や家具をラワンにしたのも、その素材が持つ雰囲気がこの土地の雰囲気に合ってるなあと思って選定してますが、その土地で大きく息を吸った感覚、その時に感じた想いとこの家の感覚は合ってるかな、なにかおもしろいだけで決めてはないかな、きちんとその都度考えて答えを出すようにしています。
おそらく、そうして出てきた答えは長い時間が経ってもぶれることは少ないのかなと思いますし、この家の佇まいを見るとこれからずっとこの場所に建って何十年後もあの家素敵だなあと思ってもらえるような雰囲気があるなあと。

その素敵な雰囲気って、建物がすごく目立ってるとか、モダンなかたちをしていてかっこいいとかではなくて、その土地の、京丹後の雰囲気がなんとなく可視化されているからきてるものなのかなと思っています。
なのでこの建物をそのまま違う地域に持って行ってもどこか違和感が出てしまうのかなと感じますが、きちんとその土地の空気感が滲み出ているのって見た目だけではない内面のかっこよさがあって、人も建物も結局はそういった感覚がないと長いこと付き合えないよなあとは思ったりするもんです。
今回は京丹後の空気感をどう家にするかを考えて私自身設計をとても楽しめましたが、またどこかの知らない土地でも仕事する機会があれば自分も知らない感覚をみることができて楽しいだろうなあと思ったりしましたねえ。