「東灘のリフォーム」

延床:113㎡ 木造2階建て

施工:あかい工房

床:杉、タイル 

壁:ミルクペイント、珪藻土、タイル 

天井:桐、ミルクペイント

古いものに包まれた暮らし

北欧ヴィンテージのうつわが好きなのでいろいろと持っていますが、そのうつわの由来を調べるときにとあるお店のネットショップにいきつくことがよくよくありました。
いったいどれだけ情報量があるのだろう・・・またこのお店でてきたなあ・・・すごい老舗なんだろうなあと思っていましたが、ひょんなことからそのお店の店主さんから神戸に中古住宅を購入してリフォーム考えてますがと連絡がきてそれはそれはびっくりしたものです。
びっくりと同時に、北欧が好きではあるけれど北欧に精通している人の家をするってどんなのだろうと楽しみ半分、不安半分だった気がします。

まだ打合せをしていた頃は東京にお住まいだったのでZOOMで打合せをしましたが、私は携帯の画面で話をしていたので資料なども持っている本を携帯で写してこんなイメージですと伝えたり、デジタルなのにアナログな打合せをしていました。
さらにこの図面を開いて欲しいと言ったらお客さんが図面を画面上に開いてくれて話をするという・・・この子大丈夫かしら?と思ってたかもしれませんが、ご夫婦とも頭の回転が実に早いもんで打合せがとてもスムーズに進んだなあと思います。

ただスムーズに話が進んだのも、北欧といっても世間一般の北欧のイメージをそのまま再現するということではなく、これからの暮らし方、LDの距離感、北欧で遊びに行った友達の家でよかったところなど自分たちがどういった家であれば心地よく住めるかという点についての話をきちんと進めていけたからかなと感じます。

そしてその要望を費用対効果を考えつつすることしないことに分けて、また既存の建物が真っ黒だったけれどその既存を活かしつつ居心地よい状態にどう着地するかなどとてもバランスがとれた設計ができたように思います。
設計がうまくいってもきちんと仕上がるかは別物なので、あかい工房のいつもの質の高い仕事によってほんとに居心地よい空間になっています。桐の天井の納め方なんて近くで見ていましたがさらっと納まってるのが不思議なもんです。真っ黒だった杉の床を削って風合いのある床にしてくれたのも感動しましたねえ。

そして、この家ですができてからも頻繁に遊びに行かせてもらってます。なんといっても北欧のおやつやごはんをいろいろ食べさせてもらえるというなんとも幸せな時間を過ごせますし話も引き出しが多くておもしろい。
この家に関わることができて世界観がほんとに広がったなあと感じますし日本にいても北欧にいるような気分になって来るたびになんだろうなあここは・・・と思ってます。

ついつい長居してしまうのですが、この家の心地よさって家の中に古いものがいろいろあるからかなと思う時があります。
ヴィンテージのうつわがたくさんあることはもちろん、古い家具、そして建物もそうした古いものになじむような素材でつくっているのでなんだか落ち着いて過ごすことができます。
ただ古ければなんでもよいという古い民家でなんだか懐かしくて落ち着くなあという感じではなくて、大切に使われてる、またそういった時間の感覚がよいのかもしれません。

フィーカとか、ヒュッゲとか、ラゴムとか、北欧のそういう考え方や時間っていいよねえと浸透してきているかと思いますが、この家にいるとそういった空気感を自然と感じます。
古いものに包まれた暮らしが心地よいなあと感じるのはその年代から使われてるものが今も使われていてその価値観が揺らいでないという点もありますが、そうしたものを愛情をもって扱ってる住まい手の感覚が家の空気感にでてるからなんだろうなあとも思ったり。

でも家ができる前からきっとそういう人なんだろうなあと思ってた気がします。なので建物自体は北欧にあるような家みたいにつくらずとも自分が向こうで感じた北欧っていいよなあという感覚がでるだろうなあと。
古いものに包まれた暮らしって見た目が古いものに包まれてるというわけではなく、古い=確かな価値観や感性でありそういったものに包まれた家って居心地がいいんだなあと自分も発見できた暮らしのあり方なのかもしれませんねえ。