「徳島の家」

延床:80㎡ 木造平屋建

施工:島出建築事務所

床:杉、コルクタイル 

壁:珪藻土、桧板張り 

天井:シナ合板、クロス

小さな平屋

徳島は三好にある小さな平屋です。
三好というとかずら橋や池田高校のやまびこ打線などが有名ですが徳島でも西の方にあります。
徳島市内から吉野川沿いにずーっと上流に行くとだんだん山に挟まれていき川から山に向かって急な地形となっていきますが、高台に建ってるため川向こうの山を見渡せそこを走る電車などがジオラマのように見える素敵な立地です。

こじんまりと暮らせるように間取りはシンプルで南側にLDK、そこから直接北側の個室に入れるようなっており廊下がない動線としています。
延床80㎡なのでかなりコンパクトですが、屋根なりに吹き抜けなので面積以上に広々としています。

また、窓をコーナーで取ることにより視線がよく抜けるようになっています。
このコーナー窓から見える景色がほんとによくてこの家に来ると外をぼーっと眺める時間が長くなります。私のおばあちゃんが住んでる長野の飯田地方も似たような感じで川向こうに家がぽつぽつ見える景色ですがそういった風景はのんびりしてていいですねえ。

このコーナー窓ですが、上部は木製造作のFIX窓、下部は外側は既製のサッシですが室内側は木製の無双窓を取り付けて景色を見る窓と風を抜く窓を分けています。
一応高台にあると風が強いという点もあり、その場の景色や風土に応じて納まりを決めています。

小さい家にすると、予算のバランスが変わってくるのでこうした納まりにお金をかけれるようになってきます。
既製品でもうまく納めればきれいには見えますが、やはりきちんと考えてつくられた造作の窓っていいもんです。

この家も、洲本の家と同時期で独立して早い時期にした仕事になります。
ただ、こうしてみると今とやってることはあまり変わらなくて、景色がよくてもガラスで大きい窓をつくり外と一体になるという設計はせずにきちんと壁があって、その壁があることで落ち着きが出るように設計してるなあと感じます。

私の設計の根本はあたたかくて静けさのある空間だと思ってますが、昔から素材の扱いや納め方、要素が強く出ないようにしてきちんとした重心のある家にしたいという意図が感じるもんです。
意匠的な部分で今だと情報をたくさん集めれるので設計の技術は簡単にあがってくもんだと思いますが、やはりこうした設計の芯の部分は変わらないものだなあと。

こうした設計の芯=人としてのあり方を見て設計を頼んできてくれる人が増えてきてひとつひとつの仕事がやりがいあるものになってきて嬉しいもんです。
著名な住宅作家でも若いころからその仕事は変わらずという方も多いですしし、そういった芯のある設計に憧れて仕事をしているので、独立当初の家がぶれてなかったということはちょっといいことだなと思ったりしますねえ。