「神戸のリフォーム」

延床:114㎡ マンション最上階

施工:セルフビルド

床:オーク無垢、絨毯、コルクタイル 

壁:珪藻土、ミルクペイント、タイル 

天井:ミルクペイント

親戚の家?

仕事をする中でうーむ・・・その予算では・・・という仕事がたまにあります。
やはりかかるものはかかってしまうし、まわりの設計士の人たちだったらその予算では無理ですねえと断るんでしょうがせっかく話をしてくれてるものを断るのってしたくないので、いろいろ方法を考えるようにはしています。
そうして考えていくと自分がするしかないな・・・となぜかなりましたがいわゆるセルフビルドでしたマンションリフォームです。

セルフビルドといってもきちんとした材料を使いたいので、床はオーク無垢のパーケットフロア、壁にオークの無垢板、珪藻土左官、天井は既存クロスにミルクペイントなど質の高い素材でできています。
建築家というとローコストになると素材も安くなりがちでそういった素材を使っても素晴らしい空間をつくる才能があればよいですが私にはありませんので、できるだけ質の高い素材を使ってその素材の美しさや質感による落ち着きを活かすようしています。

となると材料費にお金もかかってしまうのでまあセルフビルドでいけるとこはいきましょうかとなりますが、ほぼほぼ自分で作業をして2カ月間みっちり働き、最後徹夜で蜜蝋ワックスを塗り終わったのが朝の6時みたいな感じでした。(その日の9時に引っ越し屋さんがきてなにこの素敵な家と声が聞こえてきて報われた感ありましたが・・・)
ここでしんどいながらもやりきったことでいろいろと見えてきた世界がありますが、まあ、ここまで仕事するとあの家ってどんな家?と聞かれたら親戚の家でしてね・・・という感じがあります。

できあがった空間の質を見ると、嘘みたいな金額でできてますが、そうした金額も材料費と施工費のバランスであったり、どこまで職人にしてもらった方がいい質でできあがるかなど知識として得ることができますし、作業の難しさなど体感としてもつことができて後の森本設計のちょっと私作業しましょうかによるコストコントロールの強みになってる気はします。
まわりの設計士の方の金額を聞くとああ、私もそれくらい予算あったら図面たくさん書いてびしびしに納めてするのになあとか思った頃もありましたが、今となってはそれぞれの設計士に役割があって、お金ある人はごりごりの建築家さんに頼んだらいいし、私は市井の人のためにせっせと働くのがいいなあと思ったりしてます。

木製建具の枠回りをばしばしに書いたり、家具図のディテールを原寸で書いたり、納まりも線をいかに細く、美しく納めるという設計の世界もできるといえばできますが・・・
アウトレットでオークのヘリンボーンのフローリングが手に入ったらそれを書斎のとこだけ使ったり、既存建具枠のプリントされた木目のシートを剥がして上から下地の木にペンキを塗って質感だしたり、既存キッチン扉にオーク無垢材を貼って木製のキッチンに見せたり、建築家らしい引き出しから現場での頭を使っていかに費用対効果高く雰囲気を出していくかという引き出しもあったりして、こうした現場で考えながら得ていった経験が後々の仕事に生きてるなあとは感じます。

ちなみに、ここの息子さん私のことをおっちょこちょいの変な人と思ってるようで私を見るときちょっとにやけてます。
小学生にして多彩で将来この子はどうなるんだろうと密かに楽しみにしてたりしますが、とあるアメリカの学者さんが小さいころに変な人や変なものに出会うとよいと言われてたのでこのリフォームを通しておもしろおじさん?に出会ったことでいい大人になってくれたらなあとも思いましたが、そもそも、お父さんお母さん、だいぶおもしろい人よ、の影響の方が強いかもなあなんて思ってたりするもんですねえ。