「岡場のリフォーム」

延床:108㎡ 軽量鉄骨2階建

施工:あかい工房

床:杉、コルクタイル 

壁:珪藻土、クロス、桐 

天井:桐、クロス

古家付き土地を買う

不動産の購入から相談してくれるお客さんと、すでに土地を持ってたりこの物件買ったんですがどういったリフォームできますか?と相談されるお客さんとだいたい半々くらいな気がしています。
最初は今住んでいる岡場付近で中古マンションを探していて・・・という相談でしたが、子供の足音がまわりの迷惑にならないかといった点なども悩まれていて、そんな時に土地として出ていたこの軽量鉄骨の中古戸建が目に入り、見に行きすぐに購入を決めたという経緯があります。

日本の不動産って築30年もするとほぼ価値なしになってくるので土地で古家付きという不動産がちらほらありますが、見に行くとこの家全然使えるのにな・・・ということがしばしばあります。
そうなると、ほぼ土地の価格で購入できるので子供たちが巣立っていくまでの期間を住むくらいに考えてリフォーム費用を算出し、その後は夫婦二人になれば土地を売って違うところに移るという選択肢もあります。(その時に田舎に移るということもできますので)

オーストラリアとかだとお金がなくても売るときに値崩れしない担保があるという考えでお金を貸してくれるようで街中の大きい公園の前の素敵な高額なアパートに住めたりできるという話を聞いたことあったので、なるほど!と思ったことありましたが資産の考え方を柔軟にすると家がただでついてくる土地って素晴らしいのかもしれません。
一応、使える古家かどうかは私が一緒に行って判断しますが、不動産選びから信用できるなと思った設計士に頼んでおくと選択肢は広がるなあと思います。

さて、リフォームをするにあたって神戸市でも北区って寒いので床は断熱を入れて壁も付加断熱をしています。
また、費用対効果一番高いのが内窓ですが、インプラス入れてあげることで古い家でも住める環境にはなります。

と言っても性能だけがあがったところで居心地よく住めるわけではないので、いつもの雰囲気といいますか、杉の無垢材、壁は珪藻土、天井は桐になっています。
桐って箪笥?と思われがちですがこうして内装に使ってあげると桐に含まれるタンニンの部分が黒くなっていい木目になり、節とかもないので和から洋まで合う雰囲気になるいい素材です。
また桐って成長が早いので材料費が安いのも特徴的です。杉も価格が安い割にはだしで触れると暖かかったり費用対効果が高い材料だと思いますが、傷がつきやすい点に目をつぶれば自然素材の材料を取り入れやすいのかなと感じます。

すべてが柔らかい素材だとお持ちの家具とのバランスが取れなかったりするので、この家では腰壁を白煉瓦にしています。
もともと持ってる家具がチークなどだったので、結構重たい感じが床の方にでますが腰壁に白煉瓦を貼ってあげると重心が下の方に下がるので家具が家にすっと馴染んだりします。こうした素材のバランスって住まい手の感覚に合わせるようにしてますが、家具や照明が入ってくるといい塩梅で納まったなあと思うことがちらほらです。

そして、藤巻の柱もありますがこれは構造上関係なく(軽量鉄骨の家なので)後から木の丸柱をつけてます。
この柱があることでリビングに入ってきたときに開き扉の止まりができたり、ダイニング横に洗面扉がありますがそこに至る視線を和らげる効果があったり領域をつくってくれてます。
要素が少ない空間ってかっこよく見えるので写真写りはいいですが、人の動きや空間の重心などを考えて設計をしているのでいろいろと要素がでてきています。そうした設計がうまいのがアアルトですが、居心地のよさはこうした住んでからの感覚を想像することから生まれると思っています。

家って空間の良し悪しとかもありますが、予算やこれからの暮らし方、いろいろな考えがあって決まってくるのかなと感じます。
土地を買って新築をばしっと建てるのもいいですが、使えるストックを有効活用して新築よりも安いコストでうまく暮らしていけるならそれはそれでいいことだなと思ったりしますし、また中古ならではで自分で手を入れたりつくったりするのが気兼ねなくできるというのもいいなと思います。(すでに劣化してるので多少の粗があっても目立たないという点があるので)
海外だと新築の方が少ない地域も多いかと思いますが、実は世の中には使えるストックがたくさんあって、そのストックにきちんとした値がつけられてない現状をうまいこと活かしてあげると生涯設計も楽になっていいのかなと思ったりしますねえ。