「淡路のリフォーム」
延床:80㎡ 鉄骨造3階建て
施工:総合建築植田
床:ウォールナット、タイル
壁:漆喰(植田仕様)、オーク突板(安多化粧)、クロス
天井:レッドシダー、土佐和紙クロス
①
植田さんの漆喰
鉄骨造3階建て住宅の最上階が利用されずにがらんどうの空間だったので、そこを簡易な住まいとして使えるよう改修した家になります。
断熱も入ってない状態なので床上げ、壁は木軸で建てて断熱を入れ、天井も新規に組み断熱を入れています。
マンションなどでスケルトンリフォームをした場合に新しく床を上げてその上に無垢材を張るケースがありますが、この家も同じように2重床の工法でしています。
床を上げることで階下への足音を少なくできる点、また配管を容易に施工できることなどが利点になります。
この改修も大工は岡部さん。総合建築植田のスーパー大工さんです。いつも現場が整理整頓されていて仕事もきれいです。
下地の木も杉でしっかりしたものです。マンション改修などでLVLという安価な積層材使われることが多いですが、見えないところでもきちんとしたいという工務店の基本的な姿勢なのかもしれません。
で、ようやく左官仕事にやってきましたがまずこの鍋で炊いてるのなんでしょう・・・。
最初鍋を用意してあったので寒いし豚汁でもつくるのかなと思ってましたが、これは漆喰に使う海藻のりを炊いてます。
昔に姫路城の修復で漆喰を使ってるところをテレビで見たことありましたが、その時に海藻のりはちらっと写っていて昔のやり方で古い建物は補修するもんだなんて思ってましたが植田さんはこの方法を標準でされています。
手間を惜しまないで仕事をする姿勢がすごくて、ほんとに職人の鏡のような方々です・・・
まずは石膏ボードの目地を埋めていってます。
昔は竹で編んだ下地に土壁をつくりその上に漆喰を塗っていきますが現代の住宅事情ではなかなかそこまでは難しいです。(手間が多くなるためコストがかかるので)
継ぎ目にはファイバーテープという網目状のテープを貼って割れ防止とします。建物は地震はもちろん風でも動きますし、また木が動くことでもずれはでてきます。そのずれに対応するためこうしたテープが貼られています。
そして、並行して次に塗る材料の準備に入ります。先ほどの海藻のりのいい香りが広がります。実際体感すると今までの既調合の漆喰ってなんだったんだろうと思ったりしますが、なんとも落ち着く匂いです。(人によっては苦手かもですが)
こうした海藻のりの他にも様々な材料が足されていきますが植田さん独自の配合があるそう。ふつうは袋をあけて混ぜて塗るだけなのでこんなに手間がかかってるのかと驚いたものです。
できた材料をすいすい塗っていきます。
まあほんとに見ていて気持ちがよい。家をするときにどういった素材を選択するか住まい手の価値観によるかとは思いますがこうした本物の材料をよき職人に塗ってもらうのってほんとに贅沢なことだなあと感じます。
見学した日って美しい所作を一日中見てるのでなんだか普通の外の景色もいいなあなんて思いますしねえ。
ちなみにこれは下塗りなんですが、いつも下塗りでもいいよな・・・と思ってしまいます。
石膏ボードの状態でも空間の大枠って分かりますが、塗られだすと壁が生き生きとします。
私は現場に行ってそうした瞬間を見たい方なんですが、家が動き出す感じ、とても嬉しいんですよねえ。
下塗りも終わって明日塗る上塗りの準備をしています。
黄色い土を混ぜてもらってますが、漆喰だと真っ白で落ち着かない場合もあるのでトーンを落としてもらってます。(黄色でもよいしグレーでもいろいろできます、染料でもいいけど土がやはりいいよとのことです)
また塗り方も植田さん独自のやり方で軍手仕上げというものがあります。
上塗りしてから少し乾いたところにまた上塗りして(ほぼ3回塗り?)軍手で模様をつけていくというものです。
表面がでこぼこするので調質性能もあがるとのこと、また補修もしやすいので子供がいる家でも気軽に使えるのがよいです。。
この塗り厚というものも既調合に比べて厚いです。植田さんのされた家で室内に干した洗濯物がよく乾いてと言われてる方がいましたが、まあ、これだけ分厚いとそうかもなあと思ったり。
上塗りが終わって一部ニッチの部分にこれまた特殊な左官のタデラクトを塗ってくれてます。
タデラクトはモロッコの漆喰の技法ですが、塗ったものを石で磨くと独特の風合いが出ます。お風呂でも使えるそうですが不思議な左官です。
ちょっと光沢が出るので独特の風合いがありますが、こうした特殊な左官も植田さんはお手の物です。
植田さんと仕事すると「へー」とか「ほー」とかそうなんや、そうですかあ・・・という言葉ばかりでてきます。
天井はレッドシダー、床はウォールナットという素材を使うと堅苦しくなりがちですが、漆喰の力で落ち着いた風合いに仕上がってやさしい雰囲気がでています。
他の材料の風合いも大きく変えてしまう力があるんだなあと思ったりしましたが、一番はこうした本物の素材と仕事が家の中にあってすぐそばの触れる場所にあることの安心感がいいんでないかなあと思いますねえ。