「岡場のマンションリフォーム」
延床:100㎡ マンション1階(角部屋)
施工:淡河
キッチン:Nalgreen
床:くるみ、堀田カーペット、大谷石、コルクタイル
壁:砂漆喰(白土入り)、クロス、タイル
天井:クロス
①
道のような
マンションの1階角部屋のリフォームになります。
物件情報など見てるとどのマンションもだいたいそうですが、LDKと個室、和室、真ん中に1本廊下が真っすぐ通っており部屋が両サイドに配置されるという画一的な間取りが多いです。
実際の暮らし方、角部屋の1階で窓のすぐ外を人が通る、各部屋のボリューム感などここでしたい暮らしとその画一的な間取りにはギャップがあったので大幅に間取りを見直すことに。
まずお客さんから提示されたのが外周部に廊下みたいなのがあったらプライバシーが保たれるかな?という点でした。
豊中のマンションリフォームで一度そうした間取りをしていたのでその効果は体験としてあったこともありそれでいきましょうと、解体範囲が広がるので金額は上がってしまいますがどうしても後で変えることができない部分なので頑張ることに。
ただ廊下のような場所があるだけだと閉塞感も出てしまうので、廊下の一部が小上がりになっていたり、視線が見え隠れしながら抜けていたり、廊下の幅も800~1200くらい振れ幅があって廊下というより道のような場所になっています。
また、その道はリビングに至るまでに3回折れ曲がっていますがその効果も大きくて、もともと真っすぐな廊下が通っていただけの動線がくねくね動きながら移動する動線に変わることで家の奥行がだいぶ違って感じられます。(回遊動線もあるのも効いている)
後は気になる点として梁と柱の構造部分の出方が結構強いな・・・という点がありました。
普段生活していて、ごつごつした梁を見てああ、この家は頑丈なんだなあなんて思うことはなくて、どちらかといえばその無機質な存在感が目立ってしまうもんです。
そうした固さをやわらげるために、今回家具を家具作家さんのNalgreenさんにお願いしましたが、キッチンの柔らかなディテールが実にうまくはまってくれてるなあと感じます。
ショールームに行きお客さんと私とNalgreenさんでいろいろ話をしながら、その長い時間話をしたことによってお客さんの人となりが反映されたとっても素敵なキッチンになっています。
手仕事って常々大事だなと思っていますが、私の左官も含めてどこかゆらぎがあるものが空間にあるとよいなと感じます。好きなうつわとかもそうしたゆらぎがあるものが多いですが、規格でつくられたものよりもそうした心の拠り所が家の中にあるのっていいことだなと。
そんな素敵な仕事はこの現場に入ってくれた棟梁の仕事にも見てとることができます。
普段はしっかりとした日本建築をつくっておられる方なのでこうした現代の仕事に対して違和感がある部分もあったかもしれません。
かなり細かく枠回りなど図面を描きましたが、図面以上の仕事を提案してくれましたし、長い時間住む家に対しての妥協なき仕事の姿勢は見習うところが多かったなあとも思います。
木や自然素材が使われていて温もりがある空間ですよなど宣伝文句で聞くこともありますが、ただ使われていたらよいというものでもなくて適切に使われてるか?は大事なことなのかもしれません。
坂本龍一さんが生前弾かれたAquaの音をこの前聞きましたが、同じ音でもこんなに違うんだなと。どういった音をどのように奏でるかで印象ががらっと変わるように、建築も細かな表現のディテールがありそこに人間性が詰まってくるんだなと。
Aqua自体は寂しい切ない曲調にも聞こえますが、娘が生まれた時につくられた喜びの曲だそうです。
私の空間も温かくて静けさのある感じってともすれば暗くて分かりにくい部分もありますが、光と影のある美しく儚いけれどつくることの喜びに満ち溢れた空間になればと常々思っています。
この家の道は自分のそういった感性がよく詰まった道になってるなと感じてます。これから長い時間、暮らし歩いていく道ですが、美しくていいですよねと客観的に空間に身を置いて思ってたりするもんですし、家族とともに日々育っていって欲しい道であるなあとその豊かに暮らしを支える可能性を感じてたりするもんですねえ。