夕暮れ時の家

家づくりを考え中のお客さんを連れて遊びにやってきました。夕方に陽が落ちるころ、いわゆる黄昏時で誰そ彼?と物事の輪郭がぼやける美しい瞬間ってあると思いますがこの家に長い時間いるとそういった感覚を覚える瞬間がちらほらあります。
私自身はいつも現象とか感覚とか、時間がないと感じられないものを大切に設計をしているので、パースや写真などで表現できない世界観を見てもらえると分かりやすいかなあとは思ってますが、ピンとくる人はピンとくるし見てもさっぱり?という場合もあるのでこうした機会を住まい手につくってもらえるのは有難いなあと思います。
それにしても、きれいに住んでいて暮らしを楽しまれてるなあと思いますが、光と影があって心がなんとなく落ち着くという家、夕暮れ時って心の置き場がある感覚、それを設計で表現するのって難しいしどういった手法でしたらそうなるの?と言われても困る部分ではありますが、まあそれなりにいろいろ考えて積み重ねつつ現場でも細かいところで修正を加えていきつつなんとなくこの雰囲気になってるので難しい設計がうまいことできたなあと思ったりはしてます。
光を使って庭を室内に引き込んだり、壁の厚みがどこまでいけば重心が下にいくかとか、縦と横の線の見え方で長い線をどう組み合わせていけば天井も寸法以上にそこにないように感じ落ち着くのかとか・・・設計の根拠がかっこよくみえるとか、線がそろって見えるとか、素材が少なくてシュッとして見えるとかにないので起こることなんだろうとは感じます。

ただまあ、そういった感覚って住まい手が持ってるものでもあるので、暮らしぶりから感じることや話をする中で引き出されていくものでもあり、そうしたふわっとしたものをかたちに定着していく中で素直に設計したらこうなるというものでもあり、でてきたかたちをみてその場に身を置くとこの家は住まい手らしさがとてもあふれる家になったもんだなあとは感じます。
昔、大学でティーチングアシスタントしてた時に夕暮れ時に黄昏ることができる家にしたいのがコンセプトですと言われてそうした感覚を建物にするのってなんなんだろうとなんとも返答に困ったことありましたが、今だとこういう家でいいんでない?と言うかもなあと思いましたわねえ。