日常からしか生まれないものを

設計事務所の家づくりってなんじゃらほいということでお客さんに聞かれたりすることをちょっと整理。
①結構高いんですよね?
→これは結構言われるんですが、設計事務所でもピンキリなのでうちは安い方です。材料はいいものを使うし(アウトレット品など駆使する)、左官もクロス代より安くできているし(私が塗るので)、普通に費用対効果は高い事務所かなとは思います。そもそも予算に応じて設計をするので、最近だと新築で話がきてもリフォームの方が安いですよと伝えたりしますが、ある費用でどこまでできるかを一緒に考えるので高い安いではなくこの人に任せてたらいい家に住めるんだろうなあで仕事の依頼がくるようになってます。なのでどうしても住みたい中古戸建や中古マンション、土地などが価格が折り合いつかなくてもなんとかするスタンスでやってるので、まあ、いつもなんとかなってます。(むしろ、関西でもこの価格でしてる人間おらんのではないかと最近思う・・・)
②設計事務所って建築家のエゴでつくられた住みにくい家になりませんか?
→どちらかといえば世間一般のイメージ。これに関しては住んでる人が納得してるものを外野の人が住みにくそう・・・と思ってるパターンも多々あって、そもそも建築家に家を頼む人ってなんでも住める人達ではあるので住みこなしてることの方が多いなあとは感じます。私の場合はふつうの家をつくってるのでそういったことは起こりませんが、その人のイメージをもって提案も変わるのでその人らしさが出たいろんな家になることが多いです。また性能など置き去りになってそうに思いますが、新築だと耐震等級3はふつうに取るし、断熱もふつうに取るし(費用対効果もあって等級6くらいで十分という考えでしますが)、まあ、ふつうに住める家にします。そのための知識がきちんとあるから設計事務所なわけであって、これは他の設計事務所もそうなんですが、当たり前に意匠も構造も設備も詳しいもんです。なので引き出しの幅が広いのが設計事務所の特徴でもあるので、設計事務所でも住宅作家として仕事をしている人に頼めば住みやすい家にはなるなあと思います。(私が住宅作家かというと、そうありたいと思うだけなので著名な住宅作家のような方達のようにいいものつくりたいですねえ。)
③どういう家をつくってるんですか?
→自分の場合は、お客さんの人となりから家のイメージができてくることが多いのでその人らしい家になります。これは意匠的な部分が強くて持ってる家具とか、好きな色合いとか、光と影の加減もそれぞれによって違うし、風を抜きたい人、景色を優先したい人、音を大事にする人、庭とつながるのが好きな人、料理が好きな人、いろんな好みがありますがその人たちのその人らしさが家に出るようにしています。で、それをどう解釈して居心地よくするかですが、まずは素材感がきちんとあることとして木は大事にしています。床は無垢か3層フローリングでも挽板2mm以上、光の加減や色の反射を調整する意味合いもありますが板張りの天井もよく使いますし、後は左官の陰影のある落ち着いた空間はみなさん過ごし始めてからその居心地のよさに喜ばれてるようには感じます。本物の素材を使って、その人らしさがきちんと出るよう設計の引き出しを持ちつつ、飽きのこないのんびり過ごせる家をつくりたいと思ってるようには感じます。
④ハウスメーカーや工務店の家とどう違うんですか?
→まあ一人でやってるからこそすべての責任を自分が背負ってしてることが大きいかもしれません。打合せをするのもそうだし、現場を見るのもそう、またDIYの工事もするのでとにかく森本設計として自分の感性でつくりあげるものだなと思ってます。(もちろん職人さんがたくさん入ってくれるのでそれぞれの個性は出ますが、最終の判断は自分でしかできないのでそこの軸はぶれない感じです)では、その利点がどこにあるかというと、設計者の「日常からしか生まれないもの」ができてくる点にあるのかなと感じています。ハウスメーカーや工務店の家って数値や価格や機能の話が主であって、どういう暮らしぶりをしている人間(設計者)につくって欲しいという視点はないなあとは思います。森本さんってよく遊びに行ってるなあ・・・土日ちゃんと休むよなあと思われてそうですが、よい経験からしかいいものは生まれないと思ってるので、自分の心が楽しく仕事ができるよう、そしてそうした人間関係で仕事ができるということを大事にしているのでお客さんとの付き合いの深さも違うのかもしれません。
ではなぜそういう家がいいのか?ですが、愛着を持ってつくられたものは息が長いし、人の心がきちんと反映されたものでしかつくりえない居心地があるからと思ってるからかなあと。なので、名建築を見るだけが大切なことでもなくて、近くの森林植物園に行けばいろんな揺らぎを感じ取ることができるし、また子どもたちが捕まえる素直な空気感を見て学ぶことも多いです。技術的におもしろいことや、数値が高いことや、コンセプトがあり評価されやすいことなどは二の次であって、家は結局のところ日常のものではあるので、「日常からしか生まれないもの」をつくれる人でありたいなと思うもんですねえ。


