光と影
豊中のマンションリフォームももうすぐ完成です。建具入るまで大丈夫かいなと思ってたけど建具が入ったらものすごくよくて・・・ちょっとうるっときたと現場監督の大内さんが言われており見に行くの楽しみにしてましたがたしかに美しくてグッとくる空間です・・・
白といっても様々な白がありますが、この写真に写ってる建具のヴォリュームのところは少し青いグレーがかった白、奥の開口部の壁は白と黒の濃度の中だけの真っ白ではない白でそのちょっとした色の違いと光と影のでき方で不思議な変化が起こってます。(ちなみに天井も開口部のある壁と同じ白です)
この家はマンションの最上階なのですがその階には住戸が一つしかなく、またルーフバルコニーとどの部屋もつながっているのでどこか戸建のような感覚のある条件でした。もともとは部屋が細かく区切られていたのでのびのびした感覚がなく狭い感じがあったため、まずはスケルトンリフォームをして最初から空間をつくっていきました。ワンルームのような雰囲気がありつつも部屋が雁行しながらつながって見通せるとこ、見通せないとこができたり、部屋が広いとこ、狭くなるとこができたり、時には広めの廊下になったり、広がって部屋になったり、単純な平面の中でも変化があります。
上に書いてるようなことは感覚的に狙ってたことですがそれとは別にびっくりしたのが白の色が場所によって違う色に見えるというとこでした。例えば上の写真で出隅で明るいとこと暗いとこ分かれてますが、建具のある壁はL字でグレーっぽい白にしてるのでほんとは色の違いは入隅で切り替わるはず・・・ですがそうはならず見ている場所から光が当たった面が同じになり、また移動すると先ほど同じ色だったものが見ている場所が変わり光と影の位置関係が変わると違う色になりという変化がでてきてます。
部屋にいるときは建具のグレーの壁に囲まれててそちらに重さがあり、開口部のある面は色味がない白なので意識は外部に流れる(ルーフバルコニーや景色にひろがっていく)という効果があります。そして移動するとその感覚は一度消えて止まるとまた建具のグレーの壁の感覚が現れるという現象がおきます。言葉で伝えるのが難しいのですが・・・
また一日の光の入り方でもその感覚は変わるし下の写真などキッチンの手前の廊下の先とキッチン側の廊下の先でその向こうの景色が同じ空間なんだけど光の加減で二つの空間に分かれていたり(冷蔵庫を隠す箱が廊下に少し突き出してるので光が絞られて変化が起きる?)個室に向かう廊下も歩く向きで景色が変わるし家の中をうろうろしてましたが新しい感覚が生まれていておもしろい・・・光と影によってこんなに多様な変化がでるなんて自分も分からずでしたが、プランを考えていた時の寸法感覚やヴォリュームの扱いが実にうまくいってたんだなあと・・・
その他、巾木は床から1mm浮かして微妙な影を壁の足元につくったり、いろいろなディテールを使ってヴォリュームの扱いを意味のあるものになるよう組み立てていますが、建築家の方がするようなこうした細かな技術を今回ふんだんに使ってるのでいつもと違う空間になってるのかもしれません。(そういう技術的なこと本来は好きなのですが、緊張感がでることがあるため使う時と使わない時があります。住まい手がいかに居心地よく過ごせるかが一番ですので)
こうしたシンプルな空間をただきれいに線だけ揃っててというのは簡単にできるのですが、どこか情緒的な雰囲気のある空間にするのって難しかったりします。今回は光と影の扱いで空間に変化が生まれてましたがそうした現象を設計で扱えるのってうちの設計の特徴であったりはするので着地点は違えどやってることはそう変わらないのかなとも思ったりしましたねえ。