アアルトの映画を見に行く

東灘のリフォームのお客さんがアアルトの試写会行くんだけどどう?と有難いお誘いしてくれたので便乗して行ってきました。大手広告試写室という50人規模くらいの部屋で映画を見れるのですが、公開前に見るという貴重な経験ができて楽しい・・・
そしてなんといってもアアルトの映画ということもあり、公開されたら絶対見に行こうと思ってたものなので事前に見れてラッキーというのもあります。内容はアアルトの建築の変遷、また妻であったアイノ、エリッサといった家庭の部分にも焦点が当たっていたのでアアルトの意外な一面が発見できました。船の上でくねくねダンスするのか・・・とか、替え歌とかするのか・・・とか、文章では読んでいたアアルトの人柄というものが映像で見れるのでなるほどなあと思いつつ、アイノとの手紙のやり取りでアイノがプリプリしてる感じとか、しっかりと人柄というものを写そうとしており1時間45分の映画で大変だったろうなあと思ったり。感覚を植物の描写で現していたりする部分は映画として撮りたいという感覚が強くてちょっとな・・・抽象的にせずフィンランドの風景でさらっと伝えて欲しいなとも思いましたが。
まあ、朝ドラとかでないとこの長さの映画でアアルトを伝えきるのは難しいだろうなあ・・・とは思ってみてましたが、フィンランドに朝ドラはないだろうし。朝ドラだったらむしろほとんど人物描写なってしまうのできちんと建物の映像もあってところどころ建築の紹介で貴重な当時の工事映像や、また現在の建物をドローン撮影で俯瞰で見れるというのはほんと素晴らしい資料だなと。文化の家の俯瞰は鳥肌立ったなあ・・・だいぶ編集でカットしたのだろうけどあまりカットしてない建物の映像ばかり3時間とか見せて欲しい・・・と思うものでした。
ところで、アアルトの建物ってどこがよいですか?と聞かれたりするけどなかなか答えるのが難しい建物です。実際、設計を仕事にしている人の方がなんだかごちゃごちゃしていてよく分からないなあ・・・と思うみたいですがこうしたいという目的に対しての技術(ディテール)のあり方はほんとに考え抜かれてるなあと思います。
カレ邸のように納めることもできるけど自邸のような肩の力が抜けてユーモアのある感覚も持っているという。実に器用な人だったんだろうと思いますが(なのでさらっとモダニズムの流れに乗れたのでしょうが)やはり大事なのはどういう目的に対してその技術を使うかによってくるので、そこには人柄というものが大きくでてくるものであるし、単純にユーモアがあって、色気があって、素敵な人物像だったからああいった建物ができてきたんだろうなあと感じます。きれいに線を見せるという目的の建築家が多いけれどこの線によって庭の植物が美しく見えると考える建築家は少ないので。
そしてとても土着的な人だったんだろうとも思います。あんなにモダニズムの流れにうまく乗ってるのに自邸はフィンランドの民家の影響があったりするし、イタリア旅行で感じたよかった感覚というものが自分の感覚としてセイナツァロ村役場などででてきたりするし、デザインがうまいということとは別で自分が感じた感覚が建物に自然に表現されてるというのがすごいなあと・・・そしてそこからでたデザインがきちんと所員にデザイン言語として落ちていてある程度の感覚が再現されるというのがすごいなと。(日本でいうと前川国男さんの公共建築ってそういう感じですねえ。前川さんの建物も大好きです。)
ただデザインが成り立ちすぎ後期の方は建物のスケールも相まってアアルト風なのもちらほらあるのですが、権威的なつながりもありだんだんと市井の人には受け入れにくいものとなっていったという部分もあるというのはそうなんだ・・・と初めて知りました。(お札になるような人だからずっとみんなのヒーローだったのかと思ってたがそうでもないんだなあと)。
とまあ、書くといろいろ書くことありすぎるのでこの辺でやめときますが、私にとってはアアルトがつくった世界観ってほんとに心の支えになっているので、人柄という側面でいろいろ見れたのはまたアアルトのことを考えるにあたっていい刺激だったなあと感じますねえ。

家の中のアアルトの本を探したら結構たくさん。妻曰く困った時に質屋に入れるそうです。なんでやねーん。